インビザラインを使い始めたばかりの頃は、慣れないマウスピースの着脱に戸惑い「これで合っているのかな?」と不安になる方も多くいらっしゃいます。
装着方法や外し方を間違えてしまうと、マウスピースが変形・破損するだけでなく、治療がスムーズに進まなくなるため、正しい方法を知っておくことが大切です。
とはいえ、ちょっとしたコツさえつかめば、毎日の着脱やお手入れもぐんとラクになります。
この記事では、インビザラインの正しい外し方・装着方法・お手入れ方法を、ひとつひとつ丁寧に解説しています。
安心して治療を続けられるようサポートしますので、最後までご覧ください。
インビザラインの正しい外し方

インビザラインは、正しい手順を踏めば少ない力でもスムーズに取り外せるうえ、治療への影響も防げます。
ここでは、上のマウスピースと下のマウスピース、それぞれの外し方を具体的にご紹介します。
リムーバーを使った外し方もあわせて解説していますので、ご自身の状況に合わせて参考にしてみてください。
上のインビザラインを外す時
上のインビザラインを外すときは、必ず奥歯から少しずつ浮かせていき、最後に前歯を外すようにしてください。
前歯から先に外そうとするとアタッチメントが外れてしまうおそれがあります。
以下の順でマウスピースを外しましょう。
- 左右どちらかの奥歯の「舌側(内側)」に指や爪を差し込み、マウスピースと歯の境目に引っかけます。
- 指をかけたら、マウスピースを真下に向かって静かに浮かせてください。一気に引っ張らず、少しずつ歯から浮かすように力をかけます。
- 片側が浮いたら、もう一方の奥歯も同じように裏側から下方向へ力をかけて浮かせます。
- 奥歯が両側とも外れたら、前歯部分を両手の親指と人差し指でつまみ、ゆっくりと引き抜いてください。
また、指が入りにくい場合や、ネイルをしていてマウスピースが外しづらいときは「アライナーリムーバー」という専用の器具を使う方法もあります。
【アライナーリムーバーを使う場合】
リムーバーのフックを奥歯の縁に引っかけて、ゆっくりと下に引いて取り外しましょう。
アライナーリムーバーは、市販でも1,000円程度で購入可能です。歯科医院でも取り扱いがある場合もあります。
下のインビザラインを外す時
下のインビザラインを外すときも、必ず奥歯の裏側(舌側)から順に、丁寧に外すようにしましょう。
- 左右どちらかの下の奥歯の裏側(舌側)に指や爪を差し込み、マウスピースの縁に引っかけます。
- 指をかけた部分を真上に向かって浮かせてください。急に引っ張らず、段階的に持ち上げるようにして外します。
- 反対の奥歯も同様に裏側から力をかけて浮かせてください。
- 奥歯が両側とも浮いたら、前歯部分をつまみ、ゆっくりと引き抜きます。
【アライナーリムーバーを使う場合】
上のマウスピースと同様に、奥歯の内側にフックを引っかけて、真上に引いてマウスピースを取り外します。
インビザラインの正しい装着方法

インビザラインの毎日の着脱をスムーズに行うためにも、以下のポイントをひとつずつ確認しながら装着していきましょう。
マウスピースの上下が合っているか確認する
インビザラインは上下それぞれの歯列に合わせて設計されているため、装着前に軽く歯列に当ててみて、合わないと感じた場合は反対側のマウスピースではないか確認してみてください。
上下を取り違えたまま装着すると、歯にぴったりとフィットせず、矯正の効果が正しく発揮されません。
まずはマウスピースの形状をよく観察し、上用と下用を取り違えないよう注意してください。
装着前には、今から装着するのが「上の歯用」か「下の歯用」か、しっかり意識して持つようにしてください。
マウスピースを歯列に密着させる
マウスピースの上下が正しく確認できたら、歯列にそっと乗せ、両手でしっかり持ちましょう。
左右の奥歯から順に、ゆっくりと押し込むようにして装着してみてください。
装着後は、指でマウスピース全体を押しながら、浮いている箇所がないか丁寧に確認します。
また、頬の内側が巻き込まれるのを防ぐために、装着時には頬を軽く指で押さえながら装着しましょう。
マウスピースがしっかりフィットしないと感じる場合は、「チューイー」という専用のシリコンスティックを5〜10分ほど噛んでみましょう。
噛むことで歯列に圧がかかり、マウスピース全体がより密着しやすくなります。
インビザラインを間違った方法で外すとどうなる?

マウスピースを正しい手順で外さないと、変形や破損、アタッチメントの脱離といったトラブルが発生するおそれがあります。
ここでは、間違った外し方による具体的なリスクをご紹介します。
マウスピースが変形する
マウスピースを無理にひねったり斜め方向に引っ張ったり、半円を描くような方向で外すと歯列にぴったりと合わなくなることがあります。
変形したマウスピースはフィット感が悪くなり、歯にかかるべき圧力が不十分となり、歯の移動が予定より遅れてしまうこともあります。
さらに、正しくない方向に力がかかることで、意図しない歯の動きが生じるリスクも考えられます。
装着時にマウスピースが2mm以上浮いているような場合は、そのまま使用せずに歯科医院で適合確認を受けてください。
状態によっては「リファインメント(再設計)」として、新たにマウスピースを作り直す必要が生じる場合もあります。
マウスピースが破損する
力任せにマウスピースを引っ張ると、素材にヒビが入ったり割れたりしてしまうことがあります。
一度破損したマウスピースは再使用できないため、再作製が必要になります。
新しいマウスピースが届くまでの間は、一つ前の段階のマウスピースを装着して後戻りを防ぐようにしましょう。
ただし、治療が一時中断されることになるため、結果的に全体の治療スケジュールが延びる可能性があります。
アタッチメントが外れる
前歯から強引にマウスピースを外す、表側から無理に剥がす行為は、歯の表面のアタッチメントが外れる原因になります。
アタッチメントが外れるとマウスピースの保持力が低下し、矯正の力が上手く伝わらず、治療計画にズレが生じるおそれがあります。
外れた状態でも日常生活に大きな支障はありませんが、早めに歯科医院に連絡し、再装着の対応を依頼してください。
インビザラインの正しいお手入れ方法

インビザラインを毎日清潔に保つことは、口腔内の健康を守るうえで欠かせません。
適切なお手入れを怠ると、虫歯や口臭、マウスピースの劣化につながる可能性があります。
以下に、お手入れのポイントを項目別に詳しく解説します。
水で洗う
マウスピースを外したら、その都度すぐに流水でしっかりとすすいでください。
水洗いをせずに放置すると、唾液や歯垢に含まれる細菌がマウスピース内で繁殖し、口臭や歯肉の炎症の原因になることがあります。
特に外出先などで洗えない場合は、ティッシュで拭き取るだけで済ませず、可能な限り早めに水洗いするようにしましょう。
専用の洗浄剤を使用する
1日1回は、インビザライン専用の洗浄剤を使って除菌・消臭・タンパク質汚れの除去を行いましょう。
市販品の中には錠剤タイプや粉末タイプの洗浄剤があり、コップや洗浄ケースに水を入れて溶かし、マウスピースを浸け置くだけで手軽に使用可能です。
洗浄剤は歯科医院、通販サイトで入手できます。
柔らかい歯ブラシで磨く
マウスピースの汚れが気になる場合は、毛先の柔らかい歯ブラシを使用して優しく磨いてください。
硬い歯ブラシや力を入れすぎたブラッシングは、マウスピースの表面に細かい傷をつけてしまい、そこに汚れや雑菌が付着しやすくなります。
力加減に注意しながら、表面の汚れをなでるように落としましょう。
しっかりと乾燥させる
洗浄後は、ティッシュや清潔なタオルで丁寧に水分を拭き取ってください。
水分が残ったままケースに収納すると、マウスピース内に雑菌が繁殖しやすくなります。
収納前に風通しの良い場所で自然乾燥させるか、しっかりと拭き取ってからしまうようにしましょう。
専用のケースに入れて持ち歩く
マウスピースは、乾いた状態で必ず専用のケースに入れて保管しましょう。
むき出しのままバッグやポケットに入れると、変形や破損、紛失の原因になります。
ケースは常に清潔に保ってください。内部をこまめに除菌シートなどで拭き、湿気がこもらないよう、たまに蓋を開けて風通しの良い場所に置いておくと衛生的です。
また、リテーナー(保定装置)をお使いの場合も同様に、毎日水洗いを行い、週に1回程度は専用の洗浄剤を使用して除菌しましょう。
リテーナーの洗浄には、熱湯・煮沸・アルコール・入れ歯用洗浄剤は使用しないでください。変形や劣化の原因になります。
インビザラインに関するよくある質問

ここではインビザラインに関するよくある質問に回答します。
インビザラインの着脱時に痛みを感じるのはなぜ?
痛みの発生原因は以下の通りです。
- 爪でマウスピースを外す際にうっかり歯肉を押してしまい、ピリッとした痛みが出る
- マウスピースの縁が頬の内側の粘膜に強く当たり、皮膚がこすれて炎症を起こしてしまう
- 装着中に歯が一定の圧力で押されていた状態から、外した瞬間に圧力が抜けて「ジーン」とした痛みを感じる
痛みが強く続く場合や不安がある場合は、無理をせず歯科医院で相談してみてください。
インビザラインの1日の装着時間は?
インビザラインは、1日20〜22時間を目安に装着してください。
食事や歯磨きの際は取り外しますが、それ以外の時間はできる限り常に装着しておく必要があります。
装着時間が短い日が続くと、歯の移動に支障が出たりマウスピースが合わなくなったりする可能性があるため、時間管理は慎重に行いましょう。
子どもでもインビザラインで矯正できる?
インビザラインは、子どもの歯列矯正にも対応しています。
「インビザライン・ファースト」と呼ばれる小児向けのプログラムがあり、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している時期)から使用できます。
ただし、装着時間や自己管理が必要な治療法であるため、お子さま自身が取り扱いを理解し、指示通りに装着できることが前提になります。
また、マウスピース矯正が適応になるかどうかは、歯科医師による診断が必要です。
まずは矯正相談を受けて、お子さまの歯並びや発育段階に合った治療法を検討しましょう。
まとめ
矯正治療を順調に進めるためにも、インビザラインの着脱の際は力任せに引きはがさず、奥歯から順に外し、最後に前歯を外すようにしましょう。
装着時にはマウスピースをしっかり歯列に密着させ、チューイーを活用することでズレを防げます。
毎日のお手入れでは、水洗いと専用洗浄剤を併用して清潔を保ち、しっかり乾かしてから専用ケースに保管しましょう。
扱いに慣れるまでは戸惑うこともありますが、正しい方法を身につければ、着脱やお手入れの不安は自然と軽減されていきます。
もし違和感やトラブルが生じた場合は、自己判断せず早めに歯科医院へ相談するようにしましょう。