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インビザラインのリテーナーは夜だけでも大丈夫?装着忘れのリスクと通院頻度も解説

「日中はリテーナーを少しくらい外しても、もう平気かも」
インビザラインでの矯正治療を終えてしばらく経つと、そんなふうに油断して装着を忘れてしまう日が出てくる方も少なくありません。

就寝時だけの使用でいいのか、もう装着をやめてもいいのかと迷うこともありますよね。

しかし自己判断で装着時間を減らしてしまうと、歯並びが元に戻る「後戻り」や、リテーナーの不適合といったトラブルを引き起こす可能性があります。

この記事では、夜だけの装着で問題ないかどうかという疑問に対し、装着時間の目安、守らなかった場合のリスク、保定期間中の通院頻度まで詳しく解説します。

リテーナーの扱いに迷いが出てきた方や装着を忘れてしまいがちな方は、ぜひ参考にしてみてください。

浅見 拓哉
監修 矯正ドクター
日本矯正歯科学会 認定医/インビザライン認定ドクター
三上 智彦
監修 矯正ドクター
日本矯正歯科学会認定医/インビザライン認定ドクター
名倉 奈津子
監修 矯正ドクター
東京歯科大学卒/医療法人社団佑健会 勤務

インビザラインのリテーナーは夜だけ装着しても良い?

矯正治療が完了した直後に、リテーナーを夜だけ装着するのは適切とはいえません。

特に治療から半年ほどの間は歯が動きやすく、元の位置へ戻ろうとする力が強く働いているため、保定が不十分だと後戻りが起こりやすくなります。

リテーナーを夜間のみ装着する場合、装着時間は多くても10時間程度にとどまり、残りの約14時間は歯が自由に動いてしまう可能性があります。

夜だけの装着に切り替えられるのは、歯の動揺が落ち着き、後戻りのリスクが低くなってからです。
一般的には、保定を始めてから半年〜1年ほど経過していることが一つの目安とされています。

なお、装着時間を自己判断で減らすのは避けましょう。
医師の確認を受けずに夜間だけの使用に切り替えると、リテーナーが合わなくなったり、歯並びが戻ってしまったりといったトラブルを招くおそれがあります。

インビザラインのリテーナーの正しい装着時間

リテーナーの基本的な装着時間は、食事や歯磨きの時間を除き、できる限り長く装着しましょう。
その目安は1日20時間以上とされており、この時間を守ることで矯正後の歯並びをしっかりと安定できます。

保定を始めてから半年から1年ほどが経つと、歯の動揺が落ち着き始め、夜間だけの装着に移行できる場合もあります。
その後は様子を見ながら、夜だけの使用から週に2〜3回程度の装着へと段階的に減らしていくことも可能です。

また、保定期間が終了した後も歯列の安定を維持する目的で、週に数回、就寝時にリテーナーを使うよう勧める歯科医師も少なくありません。
歯は年齢や日常の習慣によってもわずかに動くため、定期的な装着を続けることが長期的な安定につながります。

インビザラインのリテーナーの装着時間を守らないとどうなる?

自己判断で装着時間を減らしてしまうと、歯の後戻りや装置の不適合など、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

ここでは、装着時間を守らなかった場合に起こり得る具体的なリスクについて見ていきましょう。

治療期間が伸びてしまう

インビザラインの治療は、矯正完了後も1日20時間以上の装着を前提に保定計画が立てられています。
装着時間が足りないと歯が計画通りに安定せず、思うように固定されなくなります。

このような状態が続くと歯が動いてしまい、リテーナーが次第に合わなくなっていきます。
結果として、リテーナーの再作製(1〜3万円程度)が必要になり通院回数が増え、治療期間が当初の予定よりも延びてしまいます。

再作製には時間と費用がかかるだけでなく、患者のモチベーションの低下にもつながりかねません。
適切な装着時間を守ることは、予定通りに保定期間を終えるための基本条件と言えるでしょう。

歯茎が下がる

装着時間を守らずに歯が動いてしまった状態で、もともとのリテーナーを無理に装着すると、歯列との適合性が損なわれ、装置による圧迫感や痛みが生じることがあります。

このように不適合な状態で使用を続けると、歯に過剰な力がかかり、歯茎や歯周組織に悪影響を及ぼし、歯肉退縮が進む可能性があります。
特に、歯根周辺の組織に負担が集中し歯茎が下がるリスクが高まります。

歯茎が下がると、見た目の印象に影響が出るだけでなく、知覚過敏や歯の寿命の短縮といった健康上の問題も引き起こしかねません。
リテーナーの装着感に異変を感じた場合は、無理に使用を続けず、必ず歯科医師に相談しましょう。

歯並びが後戻りする

リテーナーの装着を「うっかり忘れてしまう」「つい面倒に感じて装着をサボる」といった行為を繰り返すと、歯は元の位置に戻ろうとする力に逆らえず、徐々に歯並びが乱れていきます

もし後戻りが進行しすぎると、現在使用しているリテーナーが合わなくなり、装着できない状態に陥ることもあります。
再矯正となれば時間的にも金銭的にも大きな負担となるため、最初の保定期間を丁寧に過ごすことが長い目で見て最も効率的な選択です。
歯列の安定は、患者自身の管理に大きく左右されるからこそ、装着ルールを守る意識が大切です。

インビザラインのリテーナー期間の通院回数は?

リテーナーを装着している保定期間中も、矯正治療と同様に定期的な通院が欠かせません。

以下に通院回数の一例をまとめました。

保定経過期間通院頻度の目安歯の状態の傾向
開始〜3ヶ月月1回歯の位置が不安定・後戻りしやすい
3〜6ヶ月1.5〜2ヶ月に1回徐々に歯列が安定してくる
6ヶ月〜1年2〜3ヶ月に1回後戻りリスクはあるが安定傾向
1年〜2年3〜6ヶ月に1回歯列の安定度が高くなる
2年以降(保定終了)必要に応じて(年1回程度)安定していれば通院不要も可能

【通院の主な目的】

  • 歯並びや噛み合わせの安定性の確認
  • リテーナーが正しくフィットしているかのチェック
  • リテーナーの微調整や再作製の必要性の判断
  • 歯石除去や着色のクリーニングなど、口腔内の衛生管理

なお、リテーナーの衛生状態が悪い場合や噛み合わせに異常が見られる場合は、通院の頻度が再び増える可能性もあります。
一方で日頃のセルフケアを徹底し、リテーナーの状態が良好であれば、通院間隔をさらに延ばすことも可能です。

通院を怠ってしまうと、リテーナーの不具合に気づかないまま使い続けてしまうリスクが高まり、結果として後戻りや再矯正が必要になるケースにもつながります。

矯正治療で得られた、きれいな歯並びを長く維持するためにも、保定期間中の通院を欠かさず受け、安定した口腔環境を維持していきましょう。

まとめ

インビザラインによる矯正治療が完了すると、リテーナーの装着について「もう夜だけでも良いのではないか」「そろそろ装着をやめてもよいのでは」といった疑問が生じる方が多くいらっしゃいます。

しかし装着時間を自己判断で減らしてしまうと、歯並びが元に戻る「後戻り」やリテーナーの不適合といった問題につながる可能性もあります。

特に矯正終了から間もない時期は、歯の位置が非常に不安定であるため、慎重な管理が求められます。

リテーナーは「ただ装着する」のではなく「適切な時間・正しいタイミングで装着する」ことが、矯正後の歯並びを安定させるためには欠かせません。

また装着中も定期的に通院し、歯やリテーナーの状態を確認しながら進めていきましょう。

ご自身で判断がつかないときや不安があるときは、歯科医院を受診し相談してみてくださいね。


Emi

デパコスからドラコスまで大好きな、根っからの美容好き。最近は美容医療領域の興味関心度が高い。綺麗に年を重ね、素から綺麗を目指したい。