歯並びは遺伝する？影響しやすい癖や遺伝する確率が高い歯並びを紹介

「歯並びも両親から遺伝するのかな」、「子どもに自分の歯並びが遺伝しないか心配」このような悩みを抱えている方に向けて、本記事では歯並びは遺伝するものなのかを、遺伝する確率が高い歯並びや歯並びに影響しやすい癖とあわせて紹介します。

歯並びは遺伝するの？

歯並びも身長・体格・目や髪の色が両親から似るように、遺伝の影響を受けるのでしょうか。まずは、歯並びも父親や母親から遺伝するのか、遺伝しやすい歯並びの要素と合わせて詳しく見ていきましょう。

父親や母親などから遺伝する可能性がある

歯並びは父親や母親など両親から遺伝する可能性があります。また、両親だけでなく祖父や祖母などから隔世遺伝が起こる場合もあります。

身内に歯並びが悪い人がいると必ず遺伝するわけではありませんが、子どもや孫に遺伝する可能性があることは知っておきましょう。

ただし、両親や祖父母の歯並びが直接引き継がれるわけではなく、歯並びを作るさまざまな要素が影響し、結果として似たような歯並びの悪さになっているのです。

歯並びが遺伝しやすい要素

遺伝によって歯並びが悪くなる多くのケースは、顎の骨や歯の大きさが非常に深く関係しています。では、それぞれ具体的に見ていきましょう。

①顎の骨

顎の骨の形や大きさなどの骨格は、歯並びを形成するのに非常に重要な要素です。

たとえば顎の骨が小さい場合、歯が並ぶスペースが足りないため、ガタガタの歯並びになってしまいます。反対に顎の骨が大きい場合、歯と歯の間に隙間ができる「すきっ歯」になってしまうことも少なくありません。

また、顎の骨の大きさだけでなく、上顎と下顎のバランスが悪いために、歯並びに影響を与えていることもあります。

②歯の数・大きさ

歯の数や大きさも、遺伝によって歯並びに影響する要素の1つです。

永久歯の基本的な歯の本数は28本（親知らずがある方は32本）ですが、本来生えてくるべき永久歯が生えてこない「先天性欠損歯」がある方や、生まれつき歯の本数が多い「過剰歯」がある方もいます。

歯の本数は生まれつきの骨格形成によって決まるため、遺伝的要因が高いとされています。

また、歯の大きさが両親から子どもに引き継がれることも。父親または母親が大きな前歯をしていると、遺伝によって親子で同じような歯並びになる可能性があります。

遺伝する確率が高い歯並び

歯と顎の大きさやバランスが悪く骨格に問題がある場合、遺伝によって歯並びが乱れている可能性が高いです。

すべて遺伝性というわけではありませんが、以下のような歯並びは遺伝する確率が高いといわれています。

下の歯が前に出る「受け口」

本来、上の前歯が下の前歯より前に出ているのが正しい噛み合わせです。しかし「反対咬合」や「下顎前突」などとも呼ばれる「受け口」の場合、通常の噛み合わせとは反対になっており、上の前歯より下の前歯が前に出てしまっています。

受け口になる原因はさまざまなものがありますが、上顎が小さいまたは下顎が大きいといった顎の形態が原因の場合、遺伝の可能性が高いです。

両親や祖父母が受け口だと、その子どもも受け口を引き継いでしまうことが多いと言われています。

前歯が突出している「出っ歯」

「上顎前突」とも呼ばれる「出っ歯」も遺伝する確率が高いとされています。

遺伝の影響で出っ歯になっている場合、上顎の骨が成長しすぎるため前歯が突出しているケースが一般的です。上顎の骨は正常でも下顎が成長不足のため相対的に上顎が前に位置することから出っ歯となっているケースもあります。

また、前歯の大きさが遺伝し、上の前歯が他の歯より大きく目立ってしまうために、結果的に出っ歯となってしまうこともあります。

ガタガタした歯並び「叢生」

歯と歯が重なってガタガタの歯並びになっている「叢生（そうせい）」は、日本人の不正咬合で最も多いと言われています。かわいいとされる八重歯も叢生の一種です。

叢生の原因は、歯の大きさに対して顎のサイズが小さいケースと、顎の大きさに対して歯が大きすぎるケースがあります。歯と顎のサイズバランスが悪いため、歯が顎の上に並ぶスペースが足りないことにより起こります。

両親がガタガタの歯並びだから似ているというより、顎の大きさが遺伝したため、結果としてガタガタの歯並びになっている可能性が高いです。

遺伝以外に歯並びを形成する要素「生活習慣」

歯並びが悪くなる原因は、遺伝だけでなく生活習慣も大きく関係しています。以下のような癖や姿勢、習慣がある場合は、歯並びに影響を及ぼす可能性がありますので、意識して辞められるよう心がけましょう。

口呼吸

口呼吸が習慣になっていると、舌が正しい位置に収まらず歯並びが乱れる原因になります。

舌の正しいポジションは、口を閉じたときに舌先が上顎の裏側に触れている状態です。このおかげで上顎と下顎のバランスを取っています。

しかし口呼吸を行っていると口が開いたままの状態になり、舌の位置が定まりません。この状態になると唇の筋肉が弱まり、出っ歯や受け口などにつながってしまいます。

また、口呼吸は歯並びだけでなく虫歯や歯周病のリスクを高めるので、意識的に口を閉じるようにして鼻呼吸に変えていきましょう。

頬杖・猫背

頬杖をついたり猫背の姿勢は顎の骨に強い負担がかかるため、歯並びに影響を及ぼします。また、同じ方向ばかりで頬杖をついていると、アンバランスな噛み合わせになってしまうことも。

頬杖や猫背は、子どもの頃からの癖が大人になっても残っている人も少なくありません。歯や骨は長期間にわたって力が加わることで、少しずつ噛み合わせを悪化させます。普段からきれいな姿勢を意識して過ごしましょう。

舌癖

無意識に行っている舌の癖によっても歯並びが乱れる原因になります。舌で前歯を押す癖がある場合、継続的に前歯に圧力が加わっている状態になり、出っ歯やすきっ歯になってしまうこともあります。

口呼吸にならず正しい舌の位置になるように注意しましょう。

指しゃぶり

赤ちゃんの頃から指しゃぶりを長期間つづけていると、前歯を前方に押し出す力がかかり出っ歯の原因になります。

指しゃぶりは3歳くらいまでに卒業するのが理想です。4歳を過ぎても指しゃぶりが治らない場合は、歯並びに影響がでる可能性が高くなるので要注意です。

うつ伏せ・横向きでの就寝

どうしてもうつ伏せや横向きでないと寝られないという方もいるとは思いますが、いつも同じ格好や方向で寝ていると顎に負担がかかってしまいます。特に子どもの場合、顎の成長期ということもあり影響を受けやすいです。

仰向けで寝るように切り替えるのが理想ですが、どうしても難しい場合は枕の高さを調整するなど顎に負担がかからないように工夫をしてみましょう。

歯ブラシ習慣

虫歯や歯周病があると歯並びが悪くなることがありますので、毎日の歯磨きも大切です。

食べた後はできるだけ早く歯磨きをしましょう。就寝中は唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなるので、特に寝る前は念入りに磨く必要があります。

もし虫歯や歯周病になってしまったら、放置せずにしっかりと治療を行いましょう。

食事の偏り

ハンバーグやオムライスなど子どもの好きな食べ物は、あまり噛まなくても食べられるものが中心です。柔らかい物ばかり食べていては、筋肉が使われず顎も成長していきません。

よく噛むことで顎まわりの筋肉が刺激され、顎の骨が成長します。好きなものばかり食べさせるのではなく、噛み応えのある食材を取り入れたり調理方法を工夫するなど、しっかりと噛む習慣をつけましょう。

歯並びが悪いまま放置するリスク

歯並びが悪いまま治療せず放置すると、見た目だけでなく以下のようなさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

虫歯や歯周病になりやすい

歯並びが悪いと、重なり合っている歯などにしっかりと歯ブラシを当てるのが難しく、磨き残しが発生しやすいです。磨き残しがあると汚れがたまったままになってしまい、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

また、歯並びの乱れは口腔内の自浄作用をもつ唾液の分泌量がへることにもなり、虫歯や歯周病を引き起こしやすくなります。

身体に負担がかかる

噛み合わせが悪いと、食べ物をしっかりと噛みくだくことができず、唾液もしっかり分泌されません。その結果、消化器官や顎などに負担がかかりやすくなり、肩こりや頭痛につながることもあります。

顔が歪む可能性がある

噛み合わせに問題があると、片側ばかりで噛むなど噛むときに癖がついていることも多いです。顎まわりの筋肉の発達不足になり、筋肉のバランスをくずし、顔の左右が歪んでしまう可能性があります。

遺伝による歯並びの悪さを治す方法

歯並びが悪いのを放置すると、さまざまなリスクがありますので、できるだけ早く治すのがおすすめです。ここからは、遺伝による歯並びの悪さを治すにはどのような方法があるかを紹介しますので、参考にしてください。

外科的矯正治療

遺伝によって骨格に問題があり歯並びが悪くなっている場合、外科手術が必要になるケースもあります。

具体的には上下の顎が大きくずれている場合、顎の骨を削って正しい位置に引っ込める手術を行います。外科的矯正治療の流れは、手術の前と後に矯正治療を組み合わせて行われるのが一般的です。

歯科矯正治療

歯並びを治す方法にはさまざまなものがありますが、ここでは代表的なワイヤー矯正とマウスピース矯正を紹介します。

ワイヤー矯正

矯正治療の中でも昔から利用されてきた最も一般的な治療方法です。歯の表側にブラケットと呼ばれる装置をつけ、ワイヤーを通して少しずつ歯を動かしていきます。

軽度から重度まで幅広い歯並びに対応可能です。ワイヤー矯正は金属の装置を利用するのが一般的ですので、見た目が目立ってしまいます。見た目が気になる方には、透明や白の装置を利用したものや歯の裏側に装置をつける裏側矯正もあります。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は専用の透明なマウスピース型の矯正装置をつけて、少しずつ歯並びを整える治療方法です。

透明のマウスピースを利用するので、見た目が目立ちません。また、取り外し可能なので口腔内を清潔に保ちやすく、矯正前と同じように食事や歯磨きができます。

ただし取り外し可能な分、自己管理が必要で装着時間が守れないと計画通りに歯が動かないこともあります。また、重度の歯並びの乱れには対応できない場合もあります。

歯並びは遺伝と生活習慣によって形成されやすい

確かに顎の骨や歯の大きさなどは遺伝によって影響を受けやすいですが、歯並びが悪くなる原因は遺伝だけではありません。普段何気なく行っている癖や習慣なども関係していますので、生活習慣の改善に取り組むことも大切です。

遺伝による歯並びの悪さは、外科手術が必要になるケースもありますが、矯正治療によって改善することができます。ご自分の歯並びが遺伝によるものなのかお悩みの方は、矯正歯科で相談してみましょう。

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歯並びの遺伝に関するよくあるQ&A

最後に歯並びの遺伝に関するよくある疑問にお答えします。

Q.歯並びの遺伝は親からの遺伝で決まるの？

両親の歯並びが悪いと、子どもも必ず歯並びが悪くなるかというと、そうではありません。反対に歯並びが良い場合も同じです。

子どもの歯並びに親の遺伝が影響する確率は、3割程度だといわれています。残りの7割は本記事でも紹介した生活習慣です。

両親からきれいな歯並びの遺伝子情報を継承したとしても、悪い癖や習慣があると子どもの歯並びが悪くなってしまうことは十分ありえます。

Q.歯並びが決まる年齢は？

歯並びはだいたい6歳前後で決まります。個人差はありますが、一般的に6歳くらいになると永久歯が生えてきて、12歳頃まで乳歯と永久歯が混在している混合歯列期が続き、12〜13歳頃にすべて永久歯に生え変わります。

また、歯並びを形成するのに重要な顎の成長時期は、上顎が11歳までで下顎は18歳頃までです。子どものうちから噛み応えのある食べ物をしっかり噛んで、顎の成長を促進させましょう。

Q.子供の歯並びが悪いのはなぜ？

子どもの歯並びが悪い原因には遺伝や生活習慣がありますが、乳歯の生え始めは今後変化する可能性があるので、心配する必要はありません。また、永久歯の生え替わりの時期も基本的に経過観察で大丈夫な場合が多いです。

ただし、乳歯でも受け口の場合は骨格に問題があるケースが多いので、早めに矯正歯科医へ相談へ行き治療をはじめることをおすすめします。